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支援者から被災者へ。託された手紙。 |
襲撃を受けてから丸二日、一歩も外には出ていない。
大雨、強風、連日行われるデモ・破壊に対し天罰が下ったように神風が吹く。
善意ある皆様からの支援物資、指一本触れさせない。
日中関係がこれまでになく悪化し、日本に関するいいニュースは皆無に等しい中、このアクションが唯一の希望と言われている。
襲撃された時はとても怖く、帰った日の夜も悲しい気持ちが押さえられなかった。自転車を友達家族宅に預け、7個の荷物計80kgを担ぎ列車で46時間、被災地の中国人の為に来たのになぜ同じ中国人に襲われなければならないのか。悔しくてしょうがなかった。
でも僕は知っている。暴徒化し好き勝手に暴れ放題している人達の数より、遥かに遥かに遥かに多くの人達が平和を訴え、今の現状に困惑しうんざりしている。そんな善良で優しい人々がたくさんいることを。
自分が被災地でどれだけの事ができるかわからない。だけど、集めた薬の量でもなく被災地に滞在した期間でもなく、このアクション自体が自分自身数日前までは想像もできなかった程の大きな意味を今持っている。
日本人教師やビジネスマンは緊急帰国し、僕も退避するべきだという心配していただく声もある。
しかしやめるのは簡単だ。日本や台湾、東南アジアにもすぐに行ける距離。しかしここでやめてしまったら、今、日本人にとってまるで地獄と化したこの地で「最後の希望」と言われているその“希望の火”が消えてしまう。
昨夜、ある人から電話がかかってきた。携帯の画面にはH先生と表示されていた。河南省のある大学で日本語の教鞭を執っている日本人教師だ。彼女は僕の急な呼びかけにもすぐ対応して頂き、多くの薬や衣料品、そして80人を越える学生からの被災者へ向けた手紙を一日で集めて下さった方だ。その方は僕を心配して電話をかけてきてくれたのだが、しばらくして彼女が受話器の向こうで泣いている事がわかった。
今日授業で、生徒に鹿児島の場所を教えたときに、口では説明しにくかったので黒板に日本地図を書いたの出そう。周りの県との位置関係を説明する為に沖縄島を書いた時、学生から「これはアノ島ですよ!」と意見が出た。授業は問題なく終えたのだが、その後大学のエライ方々から呼び出され注意喚起を受けたのだそう。これまで3年間教えてきた学生達で、先生は学生を可愛がり皆大好きでした。そして卒業まで楽しく授業をしたかった。そこにきて今回のことは彼女にとってとてもショックだったのだろう。僕が遭った襲撃のことも含めて話しをし、30分程先生は涙が止まらなかった・・。
彼女のように、中国と中国人が大好きで、今尚頑張っている方達がいる。離れるのは簡単だが残された新学期を迎えたばかりの学生達はどうなるのか。一連のデモなどとは関係のない無垢で日本語が好きな学生達だ。離れる先生もいたが、先生は離れなかった。なのにここにきて、学びの場にまで悲しい影響を及ぼす今回の騒動。気の毒で心が痛い。
特別な日、9月18日を迎え中国全土、100カ所以上でデモや日本関連全てを狙った破壊行動が繰り返され野放しにされている中、それに対抗して強固な守りを固めなければならない。
僕がまた傷ついたらもっと悲しむ人が大勢いる。支援物資にも、 賛同して来てくれた有志にも、僕自身にも、指一本触れさせない。
襲撃以来20万人を超える方からのコメントを頂き、そのほとんどが応援と謝罪だった。暴徒化し,人々に襲いかかるのは洗脳され自身ですらコントロールが効かなくなった一部の人々。罪もなく善良な人々から謝罪を受けることがとても辛い気持ちになった。しかし同時に中国人の本当の優しさと平和を願う気持ちが垣間見ることができた出来事でもあった。政治とデモの報道の影に隠れてしまい、これまでなかなか見えなかった同じ人間として兼ね備えた優しさが・・。
中国人も、中国人による被害者である。日本車とはいえ運転しているのは中国人で、窓を割られ引きずり出され殴られるのも中国人。日本が好きでやっと貯めた資金で開いた念願の日本料理店を襲撃され店内をめちゃくちゃにされるのも中国人。日系企業の工場が破壊され、職を失うのも中国人。それにより家計が回らなくなりその家族が困るのも中国人。外国人に留まらず、中国人同士でも傷つけ合う。
もうやめようよ、こんなこと・・。
人の心を傷つけて、そのあと何が残るんだい?
憎しみと悲しみは新たな憎しみを生んで、負の連鎖は続き、中東の紛争地帯のように誰も止められなくなるよ。
Tencent weiboの公開質疑応答取材ではリアルタイムで270万人のネットユーザー観衆のもと行われ、国営テレビCCTV初め数多くのメディアの取材によりこのアクションがいかに注目されているかがわかる。僕は彼らの敵ではない。彼らも僕の敵ではない。被災者や助けを求めている人に国境はなく、助け合いの心にも国境なんてない。
あとでいい、じゃなくて彼らが窮困しているのは“いま”なんだ。
爱心无国界
(数え切れない程の人々が支持してくれ、一緒に同行したいとういう声も多いが、中国人同士でも襲われる時期になった今、彼らを身の危険のさらす訳にはいかない。)
一連の報道を受け、知り合いの複数メディアのジャーナリスト始め大学の教授、武漢警察、そして今朝日本政府(大使館)が僕ら一団を守るように地元政府と地元警察に依頼が入った。
今後は市内の移動や被災地まで、そこからも全て護衛の元となる。
詳しい場所や時間などは身の安全確保の都合上、念の為今は公に公開しない。
実は僕の服装についても友達から聞かれるのだが、メディアに上がる写真や映像では必ず東南アジアやネパールの服装、髪にターバンをつけ、逆に私的に外を歩くときは違う普通の服装そして頭には何も乗せずパーマ頭だけを出している。
最後に繰り返しになるが、僕の仲間と支援物資には指一本触れさせない。
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支援者から託された支援物資と遠藤氏(右) |
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中国TV報道