2012年10月6日土曜日

—間違った愛国ー



好きな国だけど、不思議な国だ。
最近韓国の警察が法定海域を越えて侵入して来た中国漁船と衝突し中国人漁民が一名射殺されたことで話題になっている。ネット上ではすでに炎上が始まっている。しかし国内を見てみれば、もっと酷な亡くなり方をしている国民がいることを知っているだろうか。


大学生の友達がまだ中学生だった頃、地元(信陽)の学校から家までの帰り道、一週間に一度は道端に捨てられている赤ん坊の遺体を見ていたという。多い時には一日に2体。特に女児が多かった。理由は説明しなくても想像できるだろう。


彼女自身も、実は生まれてすぐに河の橋の下に置き去りにされた。
母親の異変に気づいた親戚の伯父さんがその後探しに行き、彼女を救ったのだと。
もちろん、事実を知った彼女は母親を憎んだ。弟とも少し異なる扱いをされていた。
しかし、彼女はこの話をしてくれた後に、

「なんかさ腑に落ちないけど、もう母を許すよ。過去は過去だし。今はいい家族なんだ。」

とつぶやいた。

もし救ってくれた伯父さんがいなかったら、もし家族全員が彼女を捨てる事に同意していたら、今年の夏こうして彼女の姿を見る事はなかっただろう。道端に捨てられた家族も帰る場所も、名前すらない赤ん坊になっていたかもしれないと思うと、複雑な気持ちになる。

国内の問題には声を上げて議論しにくいのがこの国の現状だ。簡単に見つかり握りつぶされてしまうからだ。一方少しでも他国が関わると、また話は異なる。これまで溜め込んで来た怒りや不満を爆発するかのように一気に炎上する。周辺諸国はいいガス抜きに利用されてしまっているようだ。この大国に一定の連帯感と、統一をもたらす為に、愛国という名の元に怒りの根を植え付け、それを上手くコントロールしているのが今の親方だ。

その影で、声をあげられない何人もの人々が苦しんでいるのを知っているだろうか。いや、知っているからこそ貧しさに困窮する人々をより貧困させ、誰にも見つけれないように、何もなかったかのように、見せかけの平和を示しているのだろう。
自分らの保身の為に、ネット検閲に税金を注ぎ、一日千件以上のサイトを削除している暇があるのならば、その愛国の名の元に自国民にもっと手を差し伸べるべきじゃないのか。そう思ってやまない。そして誰もがそれを声を大にして言いたいが悲しい事に“まだ”言えない。じゃあ、僕がここに書こう。



北京に来る用事がなければ、被災地からそまま雲南省の“怒江”という場所にジャーナリストと共に移動する予定だった。予てから行きたいと思っていた場所だ。
「怒江」名の由来は“怒る川”。その名の通り、ゴーゴーと音を立て怒り狂うように断崖絶壁の山々の間を川が通っている。

この土地に住む人々、実は国籍が無い。

ID(身分証明)もなければ、学校にもいけない。国からの援助もない。
この場所、ミャンマーと中国の国境に位置し、かつてことあるごとに国界が何度か変わっていた。しかし今は中国雲南省の一部になっている。



100年前にミャンマーから入って来たイタリア人宣教師がきっかけで、住民のほとんどが基督(キリスト)教徒で、国の福祉が存在しない今、頼れるのは教会のみとなっている。それでも食料、衣服、気温が下がる冬に向けての毛布などが足りず、解決の糸口がない。

省道から山道を3時間歩きやっと村にたどり着く。住民約1300人中190人が国籍が貰えない。政府は承知しているが救済措置は未だにない。約半分以上の住民が着ている洋服は寄付により他の地方から送られたもの。

今現在まだ現地にいるジャーナリストと毎日連絡を取り続けているが、悲しいニュースばかりだ。人々はとても親切で泊まらせてくれ、一緒に食事に誘ってくれるが困窮した生活の話題になると涙しながら語る住民もいるという。

どうすれば合理的に政府にプレッシャーを与えられるのか。
昨日講演会の後、話し合いの場を持ち、いい方法を思いついた。(内緒w



石頭の大学幹部(とう)に失望し、その後僕が立ち上げたTencent Weibo協賛のチャリティープロジェクトも無事終了、あとはオンラインで公開されるのを待つのみ。
今後一週間北京に滞在し、再び雲南省へ。


今度はもう襲われない。ぞろぞろと、引き連れて行くよ(ハート)



http://news.ynxxb.com/content/2012-10/26/N99566047252.aspx



facebook: (keiichiro kawahara,
河原啓一郎 http://www.facebook.com/coucou.kei

1 件のコメント:

  1. 河原さん、立派だよ。
    なんだが自国の問題なのにいままで知らなかった気になっちまってすごく恥ずかしがっているけど、俺は今までもテロ政府の威力に怖がりあまりそういう事情を公的の場で語っていなかったが、

    「声が小さいからなんか、神隠しされるからなんか、全部嘘だ、お前が逃げているからだけだ。」

    そうだな、現代に入るのも何十年も経ってるのに過疎化で原始的な生活を送り、保守なお古臭い考え方を持つ国民はまだまだいるんだ。そんな彼らに、我々みたいな豊かとはいえないがせめて正常的な生活を楽しめるように何かの力がなければ。

    だが、ひとつの過疎化食い止め、テロ政治からの解放と言っても、これはかなりの人力、財力、なお度胸と人脈が必要、一日ではなすことが出来まい。我々は、時間が必要だけど、ヤツらがやれるわけがない、国民も待ちに待ってたからこれ以上持てそうもない…

    国境を越えた戦友を得て、何よりも愉しいんだ!精力を蓄えて次のところへ行くのだろう、今すぐ同行するのは無理だけどせめて見送りだけはさせてもらうぜ。

    元気でいな、河原さん!負けるなよ!河原さん!

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